経営理論に学ぶ病院経営戦略~経営学の巨匠は、この時代に何を示唆してくれるのか

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経営理論に学ぶ病院経営戦略~経営学の巨匠は、この時代に何を示唆してくれるのか

井上 貴裕 著
A5判・244頁(H257×W182 405g)並製 
◆定価:3,080円(税込)
◆ISBN978-4-909090-45-4 C2047
◆2020年9月15日発売
◆Cover Design izumiya

◎著者プロフィール
井上 貴裕(いのうえ たかひろ)
千葉大学医学部附属病院 副病院長・病院経営管理学センター長・特任教授・ちば医経塾長
東京医科歯科大学大学院にて医学博士及び医療政策学修士、上智大学大学院経営学研究科及び明治大学大学院経営学研究科にて経営学修士を修得
東京医科歯科大学医学部附属病院 病院長補佐・特任准教授を経て現職
東邦大学医学部医学科客員教授
(主要著書)
『成功する病院経営 戦略とマネジメント』(2017年3月)
『成功する病院経営 診療報酬の実践対応』(2018年5月)
『病院経営財務マネジメント』(2019年6月)
『病院経営戦略 収益確保はこうして実践する』(2020年7月)

◎内容
国は地域医療構想の実現に取り組んでおり、医療提供体制に関する改革を2025年に向けて進めている。人口減少が進む中、効率的で効果的な医療提供体制を構築することは政策的にも医療機関の側からしても望ましいことであり、機能分化と連携を支柱にした医療提供体制の整備に向けて皆で取り組んでいく必要がある。さらに2040年を見据え地域医療構想だけではなく、医療従事者の働き方改革の推進、医師偏在対策といった三位一体の改革が進められている。
そんな中、新型コロナウイルスにより医療機関経営はかつてない厳しさの真っただ中に突入した。特に東京都などの特定警戒都道府県にある新型コロナウイルスの入院患者を受け入れた病院の業績悪化は著しく、先が見えない不確実な時代が到来している。救急車搬送、紹介患者が激減し、病院業績は著しく悪化している。患者数減によって稼働率は下がったが、給与費は固定費であるし、材料費の減少幅もわずかであり、財務状況は火の車だ。2020年夏の賞与は支払えたが、冬のボーナスは払えない財務的窮地に陥る病院も数多くある。
緊急事態にはコストカットなど短期的に効果が発現しやすい対策への取組みも必須であるが、将来の成長を見据えた中長期の視点も欠かすことはできない。過去の常識にとらわれない思い切った打ち手が求められているわけだが、今は何をしたらよいのか、途方に暮れる経営者も多いことだろう。
しかし、幸いなことに脈々と受け継がれてきた経営学の理論・学説があり、それらが示唆してくれることを今一度整理しなおすことが有効である。経営の定石を知らずして新たな時代を切り拓くことはできない。経営学の巨匠たちが何を考え、主張してきたかを知ることにより、さらに深みのある病院経営が可能となるはずだ。
これらの理論はMBAなどの経営大学院では必須の知見であり、本書では病院経営に関係するできるだけ多くの学説を網羅することに努めた。そして、一般企業の事例ではなく、病院を中心とした文脈の中に位置づけたのが本書である。もちろん理論を知っていれば、病院を成長させられるほど経営はたやすいものではない。きれいごとだけでは済まされない生々しい現実も存在する。ましてや今日のような時代に突入すればなおさらである。
しかし、日々悪戦苦闘する病院経営者には処方箋が必要であり、先人の知恵から学ぶことの価値があると考えた。本書が病院経営を志す多くの方の参考になれば幸いである。

◎目次
はじめに
第1章 新任病院長が知っておくべきこと
1―1 新任病院長が心得ておくべきこと ~新任CEOを驚かせる7つの事実より~
1―2 「誰をバスに乗せるか」「誰をバスから降ろすか」 ~経営者に求められる決断~
1―3 組織変革時に求められるリーダーシップ ~まずは危機意識を高めることから~
1―4 病院経営者に求められるリーダーシップ ~リーダーシップが組織を成長に導く~
1―5 質の低下は信頼を損ね顧客を失う ~自らのドメインを考える~
1―6 顧客の声に耳を傾けよ ~イノベーションのジレンマが教えてくれること~
1―7 相反する資本と組織をどう考えるか ~病院経営者はそのバランスを重視すべき~
1―8 なぜ同族企業の業績は優れているのか ~優れた病院経営者が必要~
1―9 ブルー・オーシャン戦略 ~病院経営にブルー・オーシャンはあるのか?~
1―10 どうしたら利益が出るのか ~アライアンスが鍵を握る~
1―11 儲かることが全てではない ~医療経営におけるフレームワーク適用の限界~
1―12 手術支援ロボットへの投資競争は利益を生むのか? ~ゲーム理論が教えること~
第2章 経営戦略の定石を学び、病院経営に活かす
2―1 SWOT分析で競争優位を実現する ~ポジショニングマップの活用法~
2―2 マーケティング・ミックスで考える ~マーケティング4Pの視点を活用する~
2―3 競争環境で優位性を発揮するために ~マイケル・ポーターの競争戦略に学ぶ~
2―4 コトラーの市場地位別戦略 ~ポジショニング戦略の定石~
2―5 規模の経済性と病院経営 ~中小病院を大切にした制度設計を~
2―6 経営者に求められる英断 ~PPMに基づく資源配分の変更~
2―7 PIMSから得られた知見 ~シェア拡大が収益性を高める~
2―8 なぜ多角化をするのか? ~事業継続性と地域の実情を見据えた意思決定を~
2―9 成功する多角化とは ~実証研究から学ぶ多角化のあり方~
2―10 外部要因と内部要因いずれが重要か ~ポジショニング・アプローチとRBV~
2―11 戦略は合理的に策定されるのか? ~まずはやってみるという発想も大切~
2―12 病院には戦略があるのか? ~ケイパビリティとポジショニングから学ぶ~
 コラム・BSCの貢献
第3章 組織をどう動かし、活性化するか
3―1 組織とは何か、経営者に求められる組織設計 ~バーナードの組織論~
3―2 権限には責任が伴う ~組織デザインの大原則~
3―3 組織の形をどう考えるか ~機能別組織の限界を打ち破れ~
3―4 テイラーの科学的管理法 ~仕事の観察から標準化を進める~
3―5 ホーソン実験に基づく人間関係論 ~人間性への回帰が生産性向上につながる~
3―6 動機づけ研究の進化 ~人間は何のために働くのか~
3―7 ファヨールの経営管理論 ~実践的な管理過程学派から学ぶこと~
3―8 ポジショニングから人間性へ ~エクセレント・カンパニーの教え~
3―9 ベンチマーキングによる評価・改善 ~ベストプラクティスを探索し、最適化を目指せ~
3―10 CSRは有効か ~HSRによる社会貢献が経済的利益を生む~
3―11 学習する組織をいかにつくるか ~ダイバーシティ経営は有効か~

●奥付情報
印刷・製本 藤原印刷株式会社
初版発行 2020年9月5日