|本の詳細
巨大地震を生きのびる
次の
関東地震、南海地震に備える
‶抗震力〟
子から孫、
さらにひ孫へと語り継ぐことにより、
地震に対して成熟し、
地震に強い社会が形成されていく
神沼 克伊 著
A5判・252頁(H187×W128×14 350g)並製本
◆定価:本体価格 2,200円+税
◆ISBN978-4-909090-99-7 C0044
◆2023年8月29日発売
◆デザイン:Izumiya
【著者】
神沼克伊(かみぬま かつただ)
国立極地研究所並びに総合研究大学院大学名誉教授
固体地球物理学が専門
1937 年6 月1 日生まれ
神奈川県出身
1966 年 3 月 東京大学大学院修了(理学博士)、東京大学地震研究所入所・文部教官助手
地震や火山噴火予知の研究に携わる。
1966 年12 月~ 1968 年3 月 第8 次日本南極地域観測隊越冬隊に参加
1974 年 5 月 国立極地研究所・文部教官助教授に配置換え、以後極地研究に携わる。南極へは合計16 回公務出張。
1982 年 10 月 文部教官教授。
1993 年 4 月 総合研究大学院大学教授兼任
【内容】
「2023 年9月1日は大正関東地震(関東大震災、M7.9)の100年目である。10年前『首都圏巨大地震を読み解く』(三五館、2013)を上梓したが、出版社の閉館により廃刊となった。同書には1495年の「明応の関東地震」と1498年の「明応の東海地震」(M8.2~8.4)とを区別し、改めて明応関東地震の存在を示したこと、個人がすべき究極の地震対策として「抗震力」を提唱した。
今回、その後の10年間の地震予知関係の出来事も加え、改めて上梓することにした。以下は旧書の「まえがき」である。
『2013年9月1日は大正関東地震の90周年目である。関東大震災の死者は10万人、東日本大震災の5倍である。それ以前のおよそ80年間で東京にはM7クラスの地震が2回、M6クラスは10回近く起きている。私の住む神奈川県の湘南海岸は大正関東地震の震源地の真上である。「次の関東地震はいつか?」は首都圏の住民にとっては大問題である。
東日本大震災で「想定外」を連発した国や自治体も一部の研究者も、今度は「最悪の事態を想定」とばかり、地球上で極めて稀にしか起きそうもない事象を、あたかも日常茶飯起きるかのごとき錯覚を住民に与えている。東日本大震災直後、2つのメディアに首都圏直下型の地震が近いうちに発生しないかを地震研究者に問う記事が出ていた。20人近い研究者すべてが「1~2年のうちに発生する可能性大」と答えていた。しかし12年以上が経過しても首都圏の地震活動は、今は静かである。
明日にも超巨大地震や首都圏直下型地震が起こると言わんばかりだ。この風潮を、私は「M9シンドローム」と呼んでいる。研究者は次々に「最悪の事態」を想定し、行政、自治体もそれにそうように壊滅的な被害予測をしている。しかし、住民に対しては具体的な対応策をほとんど示していない。筆者は個人が地震に備える具体策として「抗震力」を提唱する。……』
首都圏で地震が頻発し始めるのは、今世紀の後半からである。次の関東地震は2015年ごろと予想している。南海トラフ沿いの地震は、過去の例からは21世紀の後半には起こるだろう。現代の私たちには直接関係はなさそうだが、各家庭で抗震力を話題にし、それぞれの家庭ごとに地震に対処する力をつけて欲しい。提唱している「抗震力」の知名度は低いが、私は大地震に遭遇したときの究極の目的は「生き延びることだ」と考える。自分も家族も「生き延びるにはどうすべきか」、本書を読んで考えて欲しいと願う。子から孫、さらにひ孫へと語り継ぐことにより、日本列島全体で一般市民が地震に対して成熟し、地震に強い社会が形成されていくであろう。その先に次の巨大地震が起きれば、本書の目的は達せられると考える。
【目次】
まえがき―関東大震災から100年目を前にして
●第0章 2つの巨大地震
1・南海トラフ沿いの巨大地震
2・NHKスペシャル「南海トラフ巨大地震」について
3・日本列島で群発地震の連鎖
●第1章 地震への「無知」に警告する
1・被害の教訓は後世に伝えられているのか?
2・本当の「成熟した社会」と地震
3・楽観できない地震予知の現状
4・大震法の方向転換
5・地震予知のウィークポイント
6・研究者の信用できない情報が多すぎる
7・まだ出る不確実な情報
8・大地震との遭遇は、一生の中で「珍しい出来事」
9・「抗震力」は個人でできる地震対策
10・地震対策は行政と個人の責任分担を明確に区別できる
●第2章 次の首都圏地震を探る①鎌倉大仏は知っていた
1・「想定外」に懲りた行政の大雑把さ
2・1486年の鎌倉大仏殿の記事
3・どうして鎌倉大仏は露座なのか?
4・大仏様は15m の津波を本当に見たのか?
5・『鎌倉大日記』で地震と津波を推理する
6・鎌倉大仏は関東地震の履歴
●第3章 次の首都圏地震を探る②新発見、明応の関東地震
1・疑問視され、無視されていた明応4年の地震
2・地震考古学からの新しい知見
3・明応7年の地震の震源地を考える
4・明応4年と明応7年の地震の違い
5・4回あった関東地震 一定の間隔で発生するのが特徴
6・関東地震前後の地震活動
7・次の関東地震はいつか?
●第4章 M9シンドローム
1・「想定外」に懲りて、超巨大地震を「想定」
2・過去にみる南海トラフ沿いの地震
3・M9・1「南海トラフ超巨大地震」への疑問
4・あまりに無意味な、我が神奈川県の津波想定
5・「地震を感じたらすぐ逃げろ」は真の対策か?
6・津波をもたらす地震の実態
●第5章 あなたの命を守る「抗震力」
1・抗震力とは何か
2・抗震力のスコア化
3・「今地震が起きたらどうする?」シミュレーション
4・無事に帰宅
5・たとえ壊れても潰れない家
6・居間や寝室の安全確保
7・絶対に屋根瓦を使わなかった父
8・周辺の地盤・山崩れ・がけ崩れ 地震環境 ①
9・火災の危険 地震環境 ②
10・周辺の道路など 地震環境 ③
11・津波の心配
12・地震の知識
●第6章 「抗震力」のための地震学
1・地震に関する用語
2・あまり役立たない「緊急地震速報」
3・長周期地震動
4・阪神・淡路大震災までは体感で震度を決めていた
5・マグニチュード7以上を大地震という
6・地震発生のタイプ別呼称
7・日本列島の地震分布
8・首都圏直下地震は日本列島の宿命
9・南海トラフ沿いの巨大地震は過去9回
10・地震の空白域
11・地球の寿命を見せつける活断層
12・地球の寿命と人間の寿命
13・海底地震が生み出す大津波・小津波
14・地震を起こす力
15・群発地震の豆知識
16・関東地震の到来を南極・昭和基地で待つ
あとがき
◎奥付情報
印刷・製本 モリモト印刷株式会社
初版発行 2023年8月31日