利益を生み出す 原価計算の教科書

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利益を生み出す 原価計算の教科書

‶餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?〟の著者が教える
物語で学ぶ、原価計算の本質。
なぜ、これまでの原価計算は、価値を生めないのか?

林 總 著
A5判・248頁(H210×W148×D13 430g)並製 
◆定価:本体価格 2,400円+税
◆ISBN978-4-911064-21-4 2034
◆2025年5月31日発売
◆デザイン:Izumiya

【著者略歴】
林 總(はやし あつむ)
 公認会計士、税理士、LEC 会計専門職大学院客員教授、元明治大学会計職大学院特任教授。原価計算システムの導入コンサルティング、執筆活動などをおこなっている。主なベストセラーに、『わかる!管理会計』『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000 円カットでは、どちらが儲かるか?』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(すみれ書房)、『原価計算の基本』『経営分析の基本』(以上、日本実業出版社)などがある。

【内容】
 私が公認会計士試験に合格したのは1974年でした。はじめは会計監査や税務の仕事に携わっていたのですが、10年目に原価計算で生きていくことを決めました。それから40年、原価計算システム導入コンサルティング、執筆、大学院での講義を続けています。いま人生を振り返ると、この道を選んでほんとうに良かったと思います。
 入所した監査法人の関与先で原価計算導入の仕事をすることになりました。私自身、原価計算は得意科目でしたので、軽い気持ちで引き受けました。
 その会社は部品製造から組立まで行う年商150億円の事務機メーカーでした。ところが、どこから手をつけてよいのか見当もつかず、やっと作業を始めても、それまで学んだ知識が全く使えないのです。それでも3年間の悪戦苦闘の末、なんとか「標準総合原価計算」が完成しました。
 成果物の取扱説明書を納品した日の光景を、今でもはっきりと覚えています。経理担当取締役からは喜んでもらいましたが、製造担当取締役の反応は全く異なっていました。険しい表情でつかつかと歩み寄り、私の耳元で「これは原価管理には使えないね」とささやいたのです。
 なぜ同じ会社の責任者でありながら反応が違うのか、私には理解できませんでした。自宅に戻り冷静に考えてみると、工場のことを全く知らない私が、原価管理に役立つ原価計算システムを設計できるはずがありません。その日まで標準総合原価計算を導入すれば製品原価を計算でき、原価管理もできるようになる、と無邪気にも信じていたのです。
 その日から、私の原価計算人生が始まりました。実務で使える原価計算テキストを探し求めましたがダメでした。最後に手に取ったのが「生産管理」の解説本でした。
 その本を読み終わって「原価計算は生産管理の裏返し」であることに気づきました。そして、製品原価を突破口として原価の発生源に遡るには、工程別個別原価計算でなくてはならないこともわかってきました。
 それから3年後、「製造オーダー別原価計算」を別の会社に導入しました。その効果たるや強烈で年間1億円の原価引下げを達成しました。
 本書は、これまで積み上げてきた経験をもとに、原価計算を三部構成で解説しています。第一部では、身近な出来事を原価計算の視点で見るとどうなるかを説明しています。第二部は、実際の企業が原価計算の導入に着手すると必ず起きるトラブルと考え違いを物語で解説しています。伝統的原価計算の欠陥を指摘し、次にその欠陥が経営に対して、どのような悪い影響を及ぼすか、できる限りリアルに書き込みました。加えて、新しい原価計算である活動基準原価計算について敷衍しました。ついつい読み飛ばしてしまいがちな重要ポイントに意識を向けてもらうために、章ごとに確認問題を載せてあります。そして第三部では、原価計算理論を体系的に理解するためのポイントをコンパクトにまとめました。
 本書が他の原価計算テキストと異なるのは、ここに書いた内容のすべてが、私自身のリアルな経験に基づいている点です。現在進行形で原価計算システム構築を進めている読者の皆さんは、「うちの会社と同じだ」と驚かれるはずです。業種が違っても躓く場所は同じだからです。「これは原価管理には使えないね」と冷たく言われないためにも、じっくり読み込んでいただきたいと思います。

【目次】
はじめに
■第一部 概要編 
1 あらゆるものに原価がかかっている。
2 原価計算はこんなに簡単だ
3 原価の分類
4 原価計算の教育現場

■第二部 物語編(確認問題付) 原価計算は、なぜ、使えないのか
?物語目次
プロローグ――危し! ツェルマー製菓株式会社
第1章 そもそも原価とは何か? 
第2章 原価計算マニュアルが間違っている? 
第3章 ビジネスの流れを知らずに、原価計算は理解できない
第4章 正しい製造原価がわからない
第5章 売上が増えているのに、なぜ赤字なのか?
第6章 何も価値を生まない原価が「見える化」できていない 
第7章 ABCの基本問題
第8章 経営ダッシュボードなくして儲けは出ない
エピローグ――原価を正しく計算できた後にやるべきこと

■第三部 解説編
1 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
2 原価計算基準
3 伝統的原価計算のステップ 
4 費目別計算 
5 部門別計算
6 製品別計算
7 伝統的原価計算から活動基準原価計算(ABC)へ
8 新しい原価計算の誕生
9 ABCのフレームワーク
10 リソース原価 
11 アクティビティ原価
12 コストオブジェクト原価
主要参考文献

◎奥付情報
印刷・製本 亜細亜印刷株式会社
初版発行 2025年5月31日