|本の詳細
判例に学ぶ 税法条文の‶実践的〟読み方
「又」のたすき掛けの有無はどう見分けるか?
本書は事例問題を通じて、条文解釈に必要な知識を確認しつつ、関連する判例等に示された条文解釈の思考プロセスを辿ることにより、税法条文の‶実践的〟読み方を身につけることを目指しています。
稲見誠一監修 梅本淳久 著
A5判・308頁(H210×W148×16 460g)並製
◆定価:本体価格 2,800円+税
◆ISBN978-4-909090-81-2 C2034
◆2022年10月25日発売
◆デザイン:Izumiya
【監修者】
稲見 誠一(いなみ せいいち)
デロイトトーマツ税理士法人
テクニカルセンターシニアアドバイザー
税理士
デロイトトーマツ税理士法人に入社後、パートナーとして、事業承継部門長、テクニカルセンター長、審理室長、東京事務所長、副理事長を歴任し、2016年12月1日よりテクニカルセンターのシニアアドバイザーとして、税務訴訟研究を通じて教育研修業務に従事している。
主な著書に、『詳解グループ通算制度Q&A』(清文社・共著)、『Q&A 事業承継をめぐる非上場株式の評価と相続対策』(清文社・共著)、『制度別逐条解説企業組織再編の税務』(清文社・共著)、『詳解連結納税Q&A』(清文社・共著)、『組織再編における株主課税の実務Q&A』(中央経済社・共著)、『「純資産の部」の会計と税務』(清文社・共著)、『私的整理ガイドラインの実務』(金融財政事情研究会・共著)、『ケース別にわかる企業再生の税務』(中央経済社・共著)、『実務詳解組織再編・資本等取引の税務Q&A』(中央経済社・共著)、『グループ法人税制・連結納税制度における組織再編成の税務詳解』(清文社・共著)がある。
【執筆者】
梅本 淳久(うめもと あつひさ)
デロイトトーマツ税理士法人
テクニカルセンターマネジャー
公認会計士・米国公認会計士。司法書士試験合格
デロイトトーマツ税理士法人に入社後、税務申告業務、国際税務コンサルティング業務を経験し、現在は、法令解釈や判例分析に基づく相談業務などに従事している。民間専門家として、国税審判官(特定任期付職員)に登用され、審査請求事件の調査・審理を行った経験を有する。
主な著書に『子会社株式簿価減額特例―国際的な配当をめぐる税務』、『新版【法律・政省令並記】逐条解説外国子会社合算税制』、『【法律・政省令並記】逐条解説外国税額控除~グループ通算制度・外国子会社合算税制対応~』、『詳解有利発行課税』、『[処分取消事例]にみる重加算税の法令解釈と事実認定』、『事例と条文で読み解く税務のための民法講義』(以上、ロギカ書房)、『詳解役員給与税務ハンドブック』(中央経済社)、『詳解タックス・ヘイブン対策税制』(清文社・共著)、『否認事例・裁判例からみた消費税仕入税額控除の実務』(中央経済社・共著)、『国際課税・係争のリスク管理と解決策』(中央経済社・共著)、『第10版Q&A 事業承継をめぐる非上場株式の評価と相続対策』(清文社・共著)、税務専門誌への寄稿記事に「通達・Q&A の要点を一挙に押さえる令和元年度外国子会社合算税制の改正詳解」税務弘報67巻10号(中央経済社)、「外国法を準拠法とする契約に係る税務上の取扱い[1]~[3]」月刊国際税務38巻12号~39巻2号(国際税務研究会)などがある。
京都大学理学部卒。
◎内容
本書は、判例等を題材とする事例問題の検討を通じて、条文解釈に必要な知識を確認しつつ、裁判所等の示した条文解釈に至る思考プロセスを丁寧に辿ることによって、税法条文の〝実践的″読み方を身につけることを目指すものです。
■本書の構成
本書は、判例等から抽出した「条文解釈上の手法・論点」別に、全15講で構成されています。また、各講は、大まかに、
⑴ 序論: 教授と学生の対話(導入)
⑵ 本論: 事例問題の検討
⑶ 結論: 教授と学生の対話(展開)
の3部構成となっています。
■本書の特長
事例問題の検討においては、平易な語り口で、セミナー風に話を展開し、「思考プロセス」を丁寧に辿っていきます。また、図・イラストを多用して、「情報のイメージ化」「思考のビジュアル化」を行い、直感的な理解もできるように心がけています。
■本書の内容例(第2講より)
例えば、「又は」と「若しくは」の使い分けは、しばしば初心者を悩ませますが、この使い分けのルールは、「条文解釈に必要な知識」といえます。本書は、このような基本的な知識の確認からスタートします。しかし、実務では、このような知識だけでは解決できない問題にしばしば直面します。
実は、この問題については、裁決事例と裁判例があります。しかし、両者の判断は分かれました。それでは、裁判所(審判所)は、どのような条文解釈の手法を採って、また、どのような資料を証拠として、そのような判断に至ったのでしょうか。本書は、ここに条文解釈の実践のためのヒントが隠されていると考え、判断に至る思考プロセスを分析し、丁寧に辿っていきます。
■本書の想定読者層
本書が想定する読者は、①税理士・公認会計士などの職業的専門家やその補助者、②企業の税務担当者のほか、③租税法を学ぶ大学院学生・学部学生、④資格試験受験者など、税務関係者の皆様です。本書が、税務関係者の皆様にとって、少しでもお役に立てば幸いです。
■本書の注意事項
本書は、「法令解釈→事実認定→当てはめ」のうち、「法令解釈」に焦点を当てたものです。もっとも、本書は、具体的な事例を題材としている関係上、「法令解釈」のみで話を止めるのではなく、「当てはめ」も、ポイントを絞って解説しています。
本書には、難解な事例も含まれます。そのような事例についても、わかりやすい説明を心がけていますが、仮に、「結論」を十分に理解することができなくても、結論に至る「思考プロセス」を繰り返しお読みいただければ、税法条文の〝実践的″読み方を身につける、という本書の目的は達せられるはずです。
なお、本書の意見にわたる部分は筆者の私見であり、所属する組織の公式見
解ではないことを申し添えます。
【主要目次】
はじめに
第1講文理解釈と趣旨解釈のバランス
1 プロローグ
2 一時所得の金額の計算上控除する「支出した金額」
3 外国子会社合算税制と租税回避の目的
4 外国子会社合算税制の合算対象金額の計算(参考)
5 エピローグ
参考文献等
第2講法令用語の作法⑴
1 プロローグ
2 「たすき掛け」の有無⑴
3 「たすき掛け」の有無⑵
4 「たすき掛け」の有無⑶
5 エピローグ
参考文献等
第3講法令用語の作法⑵
1 プロローグ
2 「その他」「その他の」⑴
3 「その他」「その他の」⑵
4 「前項の場合」「前項に規定する場合」
5 「当該」
6 エピローグ
参考文献等
第4講期間と期限
1 プロローグ
2 〇〇の日以後1年以内、〇〇の日から2月以内
3 〇〇を知った日の翌日から10月以内
4 基準時(基準日が経過した時)の直前
5 〇〇の日の少なくとも○日前まで
6 エピローグ
参考文献等
第5講借用概念と税法特有の取扱い
1 プロローグ
2 株式会社
3 一般社団法人
4 法人でない社団
5 米国リミテッド・パートナーシップ
6 エピローグ
参考文献等
第6講日本語の通常の用語例に従う
1 プロローグ
2 「器具及び備品」と「機械及び装置」の意義
3 エピローグ
参考文献等
第7講不確定概念―「不相当に高額」―
1 プロローグ
2 「不相当に高額な部分」の判定
3 エピローグ
参考文献等
第8講一般に公正妥当と認められる会計処理の基準
1 プロローグ
2 不動産流動化実務指針
3 エピローグ
参考文献等
第9講通達の読み方
1 プロローグ
2 通達の法的性格と運用
3 帳簿貸倒れ
4 寄附金
5 財産評価基本通達(参考)
6 エピローグ
参考文献等
第10講私法上の法形式と税法上の法的評価
1 プロローグ
2 債務超過の赤字会社に対する増資新株の払込み
3 エピローグ
参考文献等
第11講課税要件チェックリスト
1 プロローグ
2 重加算税の賦課要件
3 第三者による隠ぺい仮装行為(基礎編)
4 第三者による隠ぺい仮装行為(応用編)
5 隠ぺい仮装した事実は何か
6 積極的な隠ぺい仮装行為が存在しない場合
7 調査時の虚偽答弁
8 エピローグ
参考文献等
第12講文献調査の落とし穴
1 プロローグ
2 代表者が会社に対してした巨額の無利息貸付け
3 ストックオプションの権利行使益に係る所得の区分(参考)
4 エピローグ
参考文献等
第13講国際税務⑴ 準拠法
1 プロローグ
2 カリフォルニア州に所在する不動産の贈与
3 ニューヨーク州法を準拠法とする契約
4 エピローグ
参考文献等
第14講国際税務⑵ 租税条約と所得の源泉地
1 プロローグ
2 イタリア法人の日本人役員が受ける報酬の源泉地
3 非居住者の適格ストックオプション行使益に対する課税権
4 エピローグ
参考文献等
第15講原点に戻る―条文をよく読む―
1 プロローグ
2 外国関係会社が支払を受ける配当等の額
3 外国関係会社の貸付けの用に供する航空機に係る償却費の額
4 エピローグ
5 参考文献等
◎奥付情報
印刷・製本 藤原印刷株式会社
初版発行 2022年11月10日