スタートアップ・ベンチャー企業の経営者がIPOを考え始めたときに知っておくべき予備知識

|本の詳細

スタートアップ・ベンチャー企業の経営者がIPOを考え始めたときに知っておくべき予備知識

IPOの準備は、一度スタートすると途中では簡単に止められない。
IPOがすべてではない。
自社のメリットとデメリットを冷静に分析して決断すべき!!
井上 司・太田裕士
A5判・248頁(H210×W148×15 400g)並製 
◆定価:本体価格 3,000円+税
◆ISBN978-4-911064-07-8 C2034
◆2024年6月29日発売
◆デザイン:Izumiya

【著者紹介】
◎井上 司 (いのうえ つかさ)
公認会計士
元準大手監査法人理事 経営戦略室担当
同時に準大手監査法人のパートナーとして金商法監査・IPO監査業務及びコンサル業務に従事した。
◎太田 裕士 (おおた ひろし)
公認会計士
大手監査法人のIPO関連部署でIPO業務に従事した後、準大手監査法人のパートナーとして金商法監査・IPO監査業務及びコンサル業務に従事し、長年IPOの業務に携わる。

【内容】
数あるIPO 関連の書籍の中から、この本に興味を持ち手に取って頂きまして誠にありがとうございます。
ここ数年、一時の低迷時を脱し日本の株式市場も復活してきていることも手伝い、毎年数多くの会社がIPO を達成して上場企業となっています。この本を手にされたスタートアップ・ベンチャー企業の経営者の中にも、実際にIPO を達成した周りの経営者からIPO を勧められたことを契機に、IPOを意識するようになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
IPO というと、上場企業のステータスや自社の知名度の向上による得意先の開拓・人材の確保、株式売却によるキャピタルゲインなど、スタートアップ・ベンチャー企業の経営者のモチベーションを高めるようなメリットが数多くあります。今日、そのようなメリットを強調する情報は、インターネットや書籍等で数多く目にする機会があると思われます。また、IPO 関連の人間(証券会社やIPO コンサルタント)も一般的にはIPO に関するメリットを強調する傾向にあると思われます。
他方で、物事には何事も両面があるように、IPO を行うことについてのデメリットがあります。IPO に伴う一定の制約や費用(コスト面)などです。これらについては、メリットほど紹介されてはいませんが、インターネットや書籍等でも入手可能です。スタートアップ・ベンチャー企業の経営者には、「気になったことがあれば、先ずは試してみる」という経営スタイルに慣れている方もいるでしょう。そのため、気軽な気持ちでIPO の準備を始めようと考える経営者もいらっしゃるかもしれません。
ただここで、スタートアップ・ベンチャー企業の経営者に強調しておきたいのは、IPO の準備というのは、一度スタートすると、途中で簡単には止められないということです。IPO の準備には、コストと時間がかかるのみならず、多くの関係者が関与します。順調にIPO ができればいいですが、多くのIPO準備会社が途中でスケジュールが大幅に延期となったり、最終的には断念しているケースが多いのも現実です。そして、途中でなかなか上手くいかないことに気づいたとしても、準備の過程で生じた様々なしがらみによって、途中で容易にIPO 準備を断念できないのです。
このようなことを実務で多く目にし、スタートアップ・ベンチャー企業の経営者がIPO 準備を始めるかどうかを決断する際の判断に資する情報を提供することを目的に本書を執筆いたしました。本書では、IPO でよく生じる実務上の問題点のみならず、一般的にはあまり情報量が少ないIPO に係るコスト面の話やIPO の準備過程での気を付けたい事例なども盛り込んでみました。
スタートアップ・ベンチャー企業の経営者には、あくまでもIPO ありきではなく、自社に関するIPO のメリットとデメリットを冷静に分析したうえで、IPO 準備のスタートを決断して頂きたいと思います。本書が、その分析と決断の一助となれば幸いです。

【主要目次】
◆第1 章 スタートアップ・ベンチャー企業と出口戦略としてのIPO(イニシャル・パブリック・オファリング)
第1 節 喧しいことば「スタートアップ」
第2 節 スタートアップ・ベンチャー企業とは?
第3 節 出口戦略を前面に
◆第2 章 IPO の目的を明確にする
第1 節 何のためにIPO をしたいのか?
1.資金調達における一般的な流れについて
2.資本政策について~まずは知っておいてほしいこと~
3.東証の市場再編
第2 節 IPO のメリットを再考する
第3 節 IPO のデメリットを熟考する
第4 節 MBO をした企業
第5 節 それでもIPO がしたいのか
◆第3 章 そもそもIPO が可能かどうか準備を始める前に確かめるべきこと~セルフチェック~
第1 節 外部の専門家に相談する前に、まずはIPO 達成に必要な条件を知ろう
第2 節 東京証券取引所グロース市場の形式要件
1.グロース市場の形式要件
2.グロース市場の形式要件で注目すべきポイント~流通株式総額5 億円以上~
第3 節 東京証券取引所グロース市場の実質要件
1.実質要件
2.企業内容、リスク情報等の開示の適切性
3.企業経営の健全性
4.企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
5.事業計画の合理性
6.その他公益又は投資者保護の観点から当取引所が必要と認める事項
第4 節 スタンダード市場、TOKYO PRO Market 市場、ネクスト市場について
1.スタンダード市場
2.TOKYO PRO Market 市場
3.ネクスト市場について
第5 節 IPO を途中で挫折する、もしくは上場スケジュールが延期になるのはどのような場合なのか
1.IPO の準備を始めると決断する前に、IPO を途中で挫折したり、延期したりすることを認識しておく
2.予算統制の問題
3.労務問題
4.関連当事者取引や関係会社の解消
5.許認可・法令等の問題
6.資本政策上の問題
第6 節 IPO の準備を始める前のセルフチェック
◆第4 章 知っておくべきIPO に必要な要素
第1 節 知っておくべきIPO に必要な要素とは
第2 節 企業業績
1.企業業績のハードル
2.ビジネスモデル
3.市場(成長期、安定期、成熟期)
4.直前期(N - 1 期)の重要性
第3 節 ヒト(組織内部の人材、外部の専門家)について
1.IPO 準備に必要となるヒトとは
2.企業内部のヒト
3.企業外部のヒト(外部専門家)
第4 節 お金(コスト)について
1.お金(コスト)について
2.資本政策について
第5 節 IPO を達成するために必要となる期間
1.IPO するために必要な期間
2.IPO スケジュールの延期について
3.IPO スケジュール延期の回数
◆第5 章 IPO 達成後に成功し続けるためには
第1 節 上場ゴールとならないために
1.上場ゴール
2.IPO 達成後の成功とは
第2 節 業績を継続的に向上させるためには
1.ビジネスモデルを再検討する
第3 節 組織を拡大し続けるためには
1.IPO 後も組織を拡大していく
2.人の採用について
3.M&A について
第4 節 企業価値・株価を上昇させるための投資家が意識する指標、配当政策(自社株買い)、及びIR 活動(Investor Relations)
1.企業の成長と株価
2.企業価値と株価の違い
3.株価収益率(PER)が高い企業
4.株価と自己資本利益率(POE)
5.株価と株価純資産倍率(PBR)
6.配当政策の重要性
7.IR 活動は自社の優位性をアピールすることのみで良いのか?
第5 節 IPO 後も上手く行っている企業の事例
1.成功している企業の事例 その1 ブリッジインターナショナル株式会社
2.成功している企業の事例 その2 株式会社Libwork
3.成功している企業の事例 その3 MRT 株式会社
4.成功している企業の事例 その4 株式会社タカヨシ(株式会社タカヨシは、2024 年4 月1 日より株式会社タカヨシホールディングスに移行)
◆巻末資料
IPO 準備を決める前のセルフチェックリスト

◎奥付情報
印刷・製本 藤原印刷株式会社
初版発行 2024年7月20日