コロナから日常医療へ 戦略的病院経営の道標

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コロナから日常医療へ 戦略的病院経営の道標

コロナを言い訳にせず、今ここで歯を食いしばって頑張ったかどうかが、今後の成否を分けると感じている。
できることから1 つ1 つ着手していかなければならない。

井上 貴裕 著
A5判・408頁(H210×W148×24 600g)並製 
◆定価:本体価格 4.500円+税
◆ISBN978-4-909090-94-2 C2047
◆2023年4月17日発売
◆デザイン:有吉 一男

【著者】
井上 貴裕(いのうえたかひろ)
千葉大学医学部附属病院副病院長・病院経営管理学研究センター長・特任教授
ちば医経塾塾長
岡山大学病院病院長補佐・岡山大学客員教授
東邦大学医学部医学科客員教授
日本大学医学部社会医学系医療管理学分野客員教授
自治医科大学客員教授
地方独立行政法人東京都立病院機構理事(経営戦略担当)
独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)顧問
東京医科歯科大学大学院にて医学博士及び医療政策学修士
上智大学大学院経済学研究科及び明治大学大学院経営学研究科にて経営学修士を修得

【内容】
 2020 年2 月3 日、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」が横浜に入港し、ここからコロナとの戦いがはじまった。患者が各地に搬送され、未知の感染症に対して医療機関、そしてそこで働く職員達も恐怖と不安を強く感じた。それに先立って、国は1 月28 日に新型コロナウイルスを指定感染症とすることを閣議決定し、罹患した患者は病院で療養することになった(現状では自宅療養が中心となり、当初とは状況が大きく変わった)。
 社会に目を向けるとテレワークが推奨され、東京ディズニーリゾートなどのレジャー施設等も休業が相次いだ中で、4 月7 日、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7 都府県を対象に史上初の緊急事態宣言が発令された。このような中でも病院は24 時間365 日の体制で未知の感染症と戦うと同時に、通常診療の機能を医療者のモラルを盾に必死に維持した。
 ただ、病院の現実に目を向けると2020 年4 月・5 月の医業損益は過去最悪であり前年度よりも15 ポイント程度悪化し厳しいものであった。特に5 月は予定手術を大幅に制限せざるを得ない状況であり、紹介患者もこなかった。一方で9 月にはようやく前年度の業績を上回ったが、その後、第3 波が襲来し再びマイナスに転じた。2020 年度は歴史に名を残す状況となったが、空床確保の補助金が投入されコロナバブルに踊る医療機関が出てきたのも事実である。
 その後、2021 年度はその前年よりは患者数が戻ってきたものの医業損益ベースではいまだコロナショックから抜け切れず、厳しい状況が続いた。ただ、コロナ補助金について2020 年度よりも多額に受け取った病院が多く、最終的な決算はかつてない状況というケースもあった。とはいえ、財源には制約があり、いつまでもこの状況が続くわけではないことに我々は留意しなければならない。
 コロナが収束しない中で、先のことなど考えていられないという医療スタッフも多い。まずは目の前の緊急事態にどう対応するか、日夜対応に苦慮しているのが現実ではある。ただ、目線を変えれば、コロナを言い訳にし過ぎるのはよくないと私は考えている。もちろんコロナ医療と一般医療を両立することは困難極まり、やれること、やれないことは存在する。ただ、できることも存在するわけで、それを着実に実行していくことが期待される。今ここで歯を食いしばって頑張ったかどうかが、今後の成否を分けると感じている。
 医療機関の機能によって何ができるのかは異なるだろうが、医療提供の本質はコロナがあろうとなかろうと変わらない。自戒の念を込めて、今一度、病院経営を考えるべき時であると考える。できることから1 つ1 つ着手していかなければならない。

【目次】
コロナを言い訳にし過ぎず、できることから着実に
★第1章 コロナ禍の病院経営
1.1 アフターコロナに備えコロナ病棟をどう再開するか
1.2 コロナ禍が知らしめた重症患者への対応力を考察
1.3 2021 年の終わりに医療者への敬服と病院経営者へ提言を
1.4 コロナ直撃の2020 年度診療実態に迫る
★第2章 高度急性期医療
2.1 ICU 等の稼働率は何に左右されるのか?
2.2 ICU 等の有無による診療実績の差をどう評価するか
2.3 高度急性期の評価・急性期充実体制加算をどう考えるか
2.4 総合入院体制加算終わりの始まり
2.5 看護師の重点配置でICU の質と経済性を高める
2.6 届出病院から見えてきた急性期充実体制加算とは
★第3章 急性期医療
3.1 医療のグランドデザインで規模と機能をどう考えるか
3.2 看護必要度から心電図モニターの管理を削除すべきか
3.3 看護師配置適正化は中長期の視点で
3.4 看護必要度2022 年度診療報酬改定の影響を再考
3.5 刺激的な2022 年度診療報酬改定急性期病院どう動くべき
3.6 地域医療支援病院はテクニカルに陥らず逆紹介推進を
3.7 看護師傾斜配置はどの程度進んでいるのか?
3.8 DPC 中小病院コロナの影響で2022 年度改定は有利に
★第4章 回復期機能
4.1 地域包括ケア病棟は急性期機能と言えるのか
4.2 急性期一般入院料を回復期として届け出る意味は
4.3 DPC 病院に地ケアは必要かそのあり方を考察する
4.4 結論/回復期リハ病棟は民間に任せた方がいい
4.5 回復期病床を増やしても医療費削減にはつながらない
★第5章 医療政策と診療報酬
5.1 バイオシミラーで「真水の増収」を追求すべき
5.2 公立病院、赤字の給与構造も時代の求めに合致か
5.3 2022 年度改定から医師事務作業補助体制加算を再考する
5.4 病院給食は入院医療を継続するための“糧”
5.5 急性期充実体制加算で改めて考える「敷地内薬局」
5.6 看護師処遇改善で問われる経営者の“公平”と“現実”感覚
5.7 化学療法の入外比率から考える病院経営の品格
5.8 管理栄養士の病棟“専従”配置は未来の医療を占う試金石
5.9 全身麻酔件数よりも領域を絞ったハイボリュームセンター
5.10 2022 年度改定を振り返り、今後に向けての論点
★第6章 対談
○(金田道弘先生(金田病院理事長))病院経営は自分の人生をかける価値のある仕事
○(永田泉先生(小倉記念病院病院長))病院特有の価値観をなくし組織の機能を高めて
○(遠藤俊輔先生(自治医科大学附属さいたま医療センター長)・前田博教先生(高知県立あき総合病院長))自院の立ち位置はどこか、ベンチマークが重要
○(新井昌史先生(公立館林厚生病院長)・重田みどり先生(国立病院機構下志津病院長))不採算医療に甘えない持続可能な病院経営を
○(宇都宮啓先生(医療法人社団健育会副理事長))(上)救急受けぬ病院(中)算定なし想定内(下)評価のために?
○(吉村長久先生(北野病院総長・病院長))当たり前を毎日継続できる病院は強い

◎奥付情報
印刷・製本 亜細亜印刷株式会社
初版発行 2023年5月10日