《働き方改革に対応する》病院の労務管理者のための実践テキスト

|本の詳細

日本赤十字社病院長連盟会長・福岡赤十字病院院長
寺坂 禮治 先生 推薦!
労務管理に悩む全国の病院長へ待望の一冊!
働き方改革、医療機関も待ったなし。
具体的な問題解決の手法がここにある。
 
病院の労務管理者のための実践テキスト
渡辺 徹 著
A5判・280頁(H210×W15 450g)並製 
◆本体価格 3,400円+税
◆ISBN978-4-909090-26-3 C2047
◆2019年6月12日発売
◆Cover Design 有吉一男
 
◎著者プロフィール
渡辺 徹(わたなべ とおる)
名古屋第一赤十字病院経理部長
名古屋第一赤十字病院において2009年より人事労務管理に関する責任者を7年間務め、院内の様々な問題解決を図ってきた。
2013年より赤十字医療施設中部ブロック看護部長会の労務管理講師を継続的に務めたことをきっかけに医療機関の労務管理に関心を深め、全国の赤十字医療施設看護部長を対象とした労務管理研修会や関連医療施設の看護管理者向け労務管理研修会で講演を行うほか、他の法人の医療施設や愛知県看護協会等からの依頼による看護管理者向け労務管理の講師なども務め、労務管理上の様々な相談に対するアドバイスも随時行っている。
2017年11月広島県で開催された第6回「全国医療経営士実践研究大会」において、これらの取り組みをテーマとした「演題タイトル:「医療機関の働き方改革」を推進するためのリーダーシップ活動」を発表し審査委員奨励賞を受賞。
また、2018年度より千葉大学医学部付属病院「ちば医経塾」の医療経営学講師を務めるなど、幅広く活動している。
国家資格等:
中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科にて経営管理学修士(MBA)を習得
社会保険労務士、国家資格キャリアコンサルタント、医療経営士1級
 
◎内容
近年、保険適用された高額医薬品を使用した治療が一般的になり医療の高度化が進展する一方、国の社会保障費削減の影響を受けて、多くの医療機関は、収益の確保が見込めず厳しい経営を余儀なくされています。
また、各医療機関の選択した病院機能の届出をもとに、地域医療構想が策定され、地域の医療機関の集約・再編が進行しつつあります。
そのような状況の中で2018 年6 月29 日、働き方改革関連法案が、参院本会議で可決され成立しました。働き方改革の3 本の柱として、残業時間の上限規制・正社員と非正規社員の不合理な待遇格差を是正するための「同一労働同一賃金法」・一部の専門職を対象にした「高度プロフェッショナル制度(脱時間給制度)」が導入されます。
無駄な残業をなくし、働いた時間ではなく業務の成果を評価する働き方に変わることに一歩踏み出すことになります。医師については、「残業時間の上限規制」に5 年間の猶予はありますが、その間、医療機関においては他の医療機関との合併・連携の強化により集約化が図られることになるでしょう。医療機関内では業務の効率化にむけて働き方改革が推進されるものと思われます。
今後、生産年齢人口の減少により、職員の確保が困難になる時代が到来します。これまでの労務管理手法は正しかったか、職員の健康管理は適切に行ってきたか等、従来のマネジメントシステムを見直すことが必要です。また、医療機関は、女性職員の割合が特に高いことから、育児・介護を行いながら勤務する短時間労働者が増加する傾向にあります。短時間労働者にとっても働きやすい職場環境を整備することも必要です。
医師については長時間労働を回避できるよう、適切な労務管理を行う必要があります。医師についても、応召義務があるから適切な労務管理を行うことは難しいという理屈は通用しません。残業時間が増えている職員がいるならば、過重労働になってはいないか、また今後その可能性はあるのか等について事業主は調査し、対応する責務があるのです。
本書は、医療機関に30 年以上勤め人事担当マネージャーとして長年院内の人事労務管理の改善に取り組んできた筆者が、各医療機関の働き方改革推進のお役に立ちたいという思いから、これまでの医療機関勤務の経験や人事労務管理の研究により培ったノウハウや情報などを本書にて提供させていただくことにいたしました。
労働基準法の改正や医師の働き方改革推進の今後の方向性などについても医療機関労務管理の最前線にいる社会保険労務士としての私見を交えて述べさせていただきました。
本書は、各医療機関の院長・診療科部長・看護部長・看護師長・事務部長等を初めとする医療機関勤務のマネジメント職の皆さん向けに、厳格な法令解釈を押し付けるのではなく、ケーススタディや裁判例などを用いて、具体的な現場での問題解決の手法について解説いたしました。また、この本1 冊で医療機関の労務管理の重要性についてご理解いただけると思います。是非、医療経営に関するテキストとしてご使用いただければ幸いです。
 
◎目次
第1章 医療機関労務管理の課題
1.1 医療機関の労務管理は課題が多い
1.2 労働関係法令の理解が必要
1.3 労働基準法と就業規則
1.4 事業主が遵守すべき4つの責任
第2章 労働時間管理
2.1 労働基準法第36条協定とは(残業上限規制の導入)
2.2 3つの労働時間
2.3 三菱重工業長崎造船所事件(労働時間に関する判例)
2.4 ケーススタディ
2.5 大星ビル管理事件(休憩・仮眠時間に関する判例)
第3章 変形労働時間制の運用方法
3.1 変形労働時間制とは
3.2 休日振替の取扱い
3.3 年次有給休暇の取扱い
第4章 労働時間の適切な管理方法 
4.1 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について
4.2 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
4.3 労働時間管理に関する司法の判断基準
4.4 労働基準監督署による立入調査への対応
第5章 医療機関が遵守すべき「安全配慮義務」
5.1 安全配慮義務とは
5.2 安全配慮義務について争われた医療機関の事件
5.3 ケーススタディ
5.4 復職規程の必要性
5.5 復職規程の例(サンプル)
第6章 ワーク・ライフ・バランス
6.1 労働人口の減少と働き方改革
6.2 ケーススタディ
6.3 急性期病院の働き方改革の事例
6.4 マタニティハラスメント撲滅へ
6.5 「マタニティハラスメント」について争われた事件
6.6 育児・介護休業法に関する不利益取扱い
6.7 産後休業等取得者等の賞与減額について争われた事件 
6.8 育児休業者等の職能給不昇給について争われた事件
6.9 マタニティハラスメント防止対策
6.10 職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントの内容
6.11 職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントを防止するために事業主が雇用管理上講ずべき措置
6.12 ハラスメントを防止するために事業主が雇用管理上講ずべき措置ついての具体例
6.13 医療機関におけるハラスメントの事例
第7章 医師の働き方改革推進の方向性
7.1 労働行政による「医師の過重労働」撲滅への変遷
7.2 医師の「労働者性」について争われた事件
7.3 「医師の宿日直」について行政通達
7.4 医師の宿日直について争われた事件
7.5 労働行政による医療機関への立入調査の事例
7.6 医師の働き方改革推進のために考慮すべきポイント
7.7 医師の働き方に相応しい勤務制度は?
7.8 医師の裁量労働制をめぐって争われた事件
7.9 医師の働き方改革推進の方向性
7.10 医師の残業上限規制の仕組み
7.11 残業上限規制導入までに押さえておくべきポイント
巻末資料
■ 婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(均等法第9条)
■ 育児休業等を理由とする不利益取扱いの禁止(育介法第10条)
 
●奥付情報
印刷・製本 亜細亜印刷株式会社
初版発行 2019年6月30日