|本の詳細
検証 コロナ禍の病院経営―after COVID に向けて持続可能経営への舵取り―
経営者は
経営者はぶれてはいけない。
コロナ禍にあっても、病院経営の本質は
何ら変わらないと私は信じている。
この闘いは必ず終わる時が来るし、我々の未来は明るい。
道は必ず開ける。
井上 貴裕 著
A5判・264頁(H210×W148 410g)並製
◆定価:本体価格 3,000円+税
◆ISBN978-4-909090-65-2 C2047
◆2021年10月26日発売
◆Izumiya
◎著者プロフィール
井上 貴裕( いのうえ たかひろ)
千葉大学医学部附属病院 副病院長・病院経営管理学研究センター長・特任教授・ちば医経塾塾長
岡山大学病院 病院長補佐
東邦大学医学部医学科客員教授、日本大学医学部社会医学系医療管理学分野客員教授、自治
医科大学客員教授
東京医科歯科大学大学院にて医学博士及び医療政策学修士、上智大学大学院経済学研究科及び明治大学大学院経営学研究科にて経営学修士を修得。
◎内容
2020(令和2)年2 月3 日のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」が横浜に入港し、ここから新型コロナウイルス感染症との戦いがはじまった。その後、2020(令和2)4 月7 日、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7 都府県を対象に史上初の緊急事態宣言が発令され、第1 波の4 月・5 月の病院業績は惨憺たるものであった。紹介患者数が大幅に減少し、予定手術を制限せざるを得ない状況に陥ったことにより、医業収益の減少がかつてない水準に達した。この先どうなってしまうのだろうと途方に暮れる日々が続いた。その後、9 月には前年対比で増収となる病院が多く、秋口に回復の兆しが見え始めたところに、第3 波が襲来し、再び厳しい状況が訪れた。
その後、4 兆円を超えるコロナ補助金が投入され、コロナバブルに踊り、2020年度決算では過去最高益を記録する病院が多数存在したのも事実である。ただ、これについては全ての医療機関が恩恵を被ったわけではないし、いつまでも持続するものでもない。とはいえ、現状はコロナ補助金で財務的には何とか首の皮がつながっているという病院が多いものと予想され、我々は国に感謝しなければならない。
ただ、現実に目を向ければ、紹介患者が元に戻らないなど、将来に向けて不安材料は尽きない。今後もしばらくはその傾向が続く覚悟が必要だろう。
一方で、コロナ患者用に病床を設けた医療機関では以前と同水準の入院患者の受入れができているという声も耳にする。だとするとアフターコロナに向けてその病床をどう再開するか議論を始めようとしている最中に、第5 波が襲来した。
この第5 波は災害レベルであり、地域によってはかつてない診療制限をせざるを得ない状況に陥っている。千葉大学病院は、2021 年8 月12 日時点で県内最多の入院患者を受け入れ、コロナ用のICU も満床など、診療制限をせざるを得ない状況だ。何しろ1 年半以上闘い、この窮地を救ってきたスタッフからすれば、先が見えない闘いに疲弊の色は隠せない。中等症以上を中心にすでに430 人を超える入院患者に対応してきたのだから。
そんな中で、千葉県内で新生児についての不幸な報道があり、我々としては最大限、地域のために最善の医療提供を行う所存である。ただ、高度医療にはお金がかかる。これからもあるべき医療を提供し続けるためには、車の両輪である経済性を無視することはできない。持続可能な医療提供体制の構築に向けて、病院経営の舵取りをどうすべきか。病院経営者に課された責任は大きい。
本書は新型コロナウイルス感染症の重症患者を中心に受け入れ、同時に病院経営の両立を図るために筆者が何を感じ、考えたかをデータ等に基づき検証した軌跡である。
経営者はぶれてはいけない。ただ、未知のウイルスに直面し、不安なときもある。とはいえ、コロナ禍であっても、病院経営の本質は何ら変わらないと私は信じており、それを実践しているつもりだ。本書を手にとっていただければそのエッセンスがご理解いただけるものと考えている。
この闘いは必ず終わる時が来るし、我々の未来は明るい。道は必ず開ける。
◎主要目次
〇第1 章 新型コロナ禍の病院経営を検証する
1-1 悪化する病院経営の復活への道程を焦らず粛々と
1-2 コロナ禍でやってはいけないこと、やるべきこと
1-3 補助金頼みではなく、病棟再編など自ら行動を
1-4 変化する重症の定義に合わせた病棟構成へ発想の転換を
1-5 より濃厚な治療で医療の質を高め、この難局を乗り越える
1-6 戻らない「待てる手術」をどう考えるか
1-7 いよいよ本格稼働の時、強きはより強く弱きは衰退へ
1-8 医療崩壊を目前に、必要な医療の線引きは可能なのか
1-9 第1 波から見えたコロナ禍の戦略
1-10 今求められるICU のトリアージを考察する
1-11 新型コロナウイルスと働き方改革―医療事務作業補助者の重点配置を―
1-12 なぜ日本はコロナ病床が確保できないのか?
1-13 コロナバブルの過去最高益をどう考えるか
1-14 アフターコロナを見据えて―自治体病院の真価と再評価―
〇第2 章 持続可能な病院経営の舵取りをどうすべきか
2-1 現実は地域医療構想の推計よりも厳しい―幻想は捨てよ―
2-2 患者移動の実態から高度急性期病院の患者獲得を考える
2-3 働き方改革に沿った対策から「真水の増収」が期待できる
2-4 買い手市場の今こそMR の有効活用を
2-5 2020 年度、機能評価係数から見えること
2-6 下位グループからトップに立てた係数対策とは
2-7 地域包括ケア病棟 2020(令和2)年度改定の影響とこれから
2-8 「儲かる回復期リハ病棟」をどう考えるか
2-9 地域包括ケア病棟の地域差から見える今後の方向性
2-10 医師が確保できれば患者が増加する―医師偏在をどう考えるか―
2-11 医師確保を視野に、これからの外科医療を考える
2-12 2020 年度改定で見えた看護師必要度の本質
2-13 手術の外来化を図り、急性期らしさを追求すべき
2-14 救急車搬送入院を円滑に受け入れるために―コロナ禍での新入院患者の確保策―
2-15 救急加算と救命救急入院料、10 倍の報酬差をどう考えるか
2-16 1入院包括払いは時期尚早ではないか
2-17 病院経営を成功に導くために―緊張感と前向きさを持続する組織文化を―
〇第3 章 【対談】With コロナと病院経営
3-1 COVID-19 重症患者の集中化は看護師確保が課題―全看護師が集中治療の技術を持てば医療に未来は明るい―(竹田晋浩・ECOM ネット(かわぐち心臓呼吸器病院)×橋本悟・ECOM ネットCRISIS(京都府立医科大学)×大下慎一郎・広島大学病院×井上貴裕)
3-2 病院経営者は価値を高める取組を求めて―医療の今、未来を考える―(宮坂信之・東京医科歯科大学×井上貴裕)
3-3 急性期病院としての覚悟の強さの理由―患者を制限しないコロナ対応が成果、大垣市民病院―(金岡祐次・大垣市民病院×井上貴裕)
3-4 断らない病院へ、意識改革がV字回復に―看護師再配置など経営改善への取組が成果へ―(向井正也・元 市立札幌病院×井上貴裕)
3-5 医師を育て良い病院を作る文化に―医師同士が協力しないと今後の医療は成り立たない―(泉並木・武蔵野赤十字病院×井上貴裕)
●奥付情報
印刷・製本 藤原印刷株式会社
初版発行 2021年11月10日