|本の詳細
医師の労働時間短縮と追加的健康確保措置への対応
2024年から始まった「医師の働き方改革」をいかに実施するかを、長年、病院の労務管理に携わってきた編著者を中心とする実務家グループが詳細に解説!
最先端の「就業管理システム」の仕組みを紹介!
渡辺 徹 編著
A5判・216頁(H210×W148×D13 340g)並製
◆定価:本体価格 2,800円+税
◆ISBN978-4-911064-12-2 2047
◆2024年10月19日発売
◆デザイン:有吉一男
【著者略歴】
◆渡辺 徹(わたなべ とおる)
千葉大学客員准教授
医療労務管理研究会代表
800 床を超える複数の高度急性期病院(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院・名古屋第二病院)において事務部長を務めてきた。名古屋第一病院在職中に社会保険労務士の資格を取得。院内の様々な労務管理上の問題解決を図ったことをきっかけに医療機関の労務管理について関心を深めた。
千葉大学医学部附属病院「ちば医経塾」や外資系企業が開催するセミナー等において、医療機関の労務管理に関する講演を行うほか、愛知県看護協会、愛知県立大学大学院の非常勤講師を務めている。2023年より医療機関勤務環境評価センターの労務管理サーベイヤーとして労務監査に取り組んでいる。また、医療機関の労務管理アドバイザーとして高度急性期病院を中心に支援している。
国家資格等:社会保険労務士、経営管理学修士(MBA)、医療経営士1級、国家資格キャリアコンサルタント
著書:『病院の労務管理者のための実践テキスト』(2019年6月12日、ロギカ書房)『これだけは知っておきたい医師の働き方改革実践テキスト』(2021年10月5日、ロギカ書房)
※医療労務管理研究会ホームページ:https://iryouroumu.com/
◆川口 潤(かわぐち じゅん)
アスパワー社労士事務所代表。社会保険労務士。元労働基準監督官。東北大学教育学部卒業。2007年任官後、鹿児島、埼玉、北海道、本省にて勤務。監督官経験を軸により広く労務サポートを行いたいと考え、2019年埼玉局川口署主任監督官を最後に退官し、名古屋市にて開業。現在、労務顧問、スポット対応問わず、労務トラブル防止のため企業サポートに励んでいる。
◆工藤 祐介(くどう ゆうすけ)
愛知県社会保険労務士会所属
愛知県社会保険労務士会勤務等部名古屋西支部幹事
日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院勤務時に、人事部門の管理者として、院内の働き方改革への対応をはじめとした労務管理上の課題解決に取り組んだ。
◆阪野 洋平(ばんの ようへい)
1999 年より愛知県西三河地方にある総合病院にて勤務。
これまでに人事、総務、広報、医事、安全衛生、品質管理、医師臨床研修にかかわる部門を経験。2024 年度より、同一法人の慢性期病院で事務長を務めている。
【資格等】
社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、第一種衛生管理者
◆藤浦 威明(ふじうら たけあき)
自治体職員
2019 年4月1日付けの人事異動により病院経営管理部管理課総務係配属となる。管理課総務係において、地方公務員法改正、働き方改革などの職務を行ってきた。働き方改革への対応を行う中で労務管理の知識が必要と感じ社会保険労務士を目指し2022年に社会保険労務士試験に合格した。病院長はじめ他の職員の協力を得ながら県内で、一番最初に特定地域医療提供機関(B水準)の指定を取得した。
【資格等】
国家資格等:社会保険労務士、医療労務コンサルタント、市町村職員中央研修所(市町村アカデミー)地方公務員法研修講師養成講座修了
◆森本 智恵子(もりもと ちえこ)
大学卒業後、税理士事務所にて監査を担当し、出産後育児・介護をしながら会計事務所で企業のアウトソーシング部門を担当。顧問先の「人」に関する相談を多く受けたことをきっかけに社会保険労務士事務所に転職、その年に資格取得し社会保険労務士として手続から相談・役所折衝を担当。15年以上にわたり経営者や管理職の「困った」や悩みの相談を受け、また一方で中間管理職の悩みや長時間労働の苦しみも自身が体験してきたことから2016年5月森本社会保険労務士事務所開所時より経営者と従業員がWIN-WINになる「人財教育」に力を注いできた。現在年間50本以上の法律、マナーやハラスメント、女性活躍推進に関する研修をおこなう他、医療機関のPDCAコンサル・相談業務、働き方改革プロジェクトコンサルタントとしても活動。
【講演、研修実績】
厚生労働省、中部経済産業局、ヒューマンアカデミー、全国公益法人協会、日本農村医学会学術総会、愛知県医師会、静岡県医師会、愛知県産婦人科医会、愛知県看護協会、愛知県社会保険協会、愛知県医療勤務環境改善支援センター、医療機関(大学病院、公立病院等)、企業、高校・専門学校他
愛知県産婦人科医会会報寄稿、「いきサポ愛知」寄稿、公益法人機関誌掲載等
【国家資格等】
社会保険労務士、AFP、認定登録医業経営コンサルタント、碧南市公平委員会委員就任、厚生労働省委託事業医療労務管理支援事業スーパーバイザー、愛知県医療勤務環境改善支援センター医療労務管理アドバイザー、日本プロフェッショナル講師協会認定講師
◆山内 里佳(やまうち りか)
山内社会保険労務士事務代表
社会保険労務士資格取得後、愛知労働局労働基準部に4年間勤務し、労働時間設定改善、ワーク・ライフ・バランス、看護職の働き方についてなどの周知業務に従事。現在は顧問先の労務相談、人事労務管理、職務評価制度構築、労働関係法令・社会保険の各種手続き等を行う傍ら、なごやナースキャリアサポートセンターをはじめ、全国各地で労働関係法令、働き方改革、同一労働同一賃金、職務評価制度、パワハラ・セクハラ、女性の活躍促進、育児・介護・病気の治療と仕事の両立支援等、幅広い分野でセミナー講師としても活躍中。また、日本医師会からの委嘱を受け、医療機関勤務環境評価センターの労務サーベイヤーとして全国を対象に病院の労務監査に携わっている。
【資格等】
特定社会保険労務士、医療労務コンサルタント、両立支援コーディネーター、愛知県病院事業運営評価委員
◆渡邊 健司(わたなべ けんじ)
2007 年に弁護士登録し、弁護士法人愛知総合法律事務所にて勤務を開始。2012 年11月から2014年10月まで県内の大学病院に出向し病院内弁護士として活動する。出向中は病院内の労務管理、労使紛争、問題従業員対応、懲戒審査、ハラスメント調査、労災対応等、労働法務分野に関する様々な業務を取り扱う。2014 年11月から弁護士法人愛知総合法律事務所に復帰し、病院、クリニック等の医療機関の業務を中心的に取り扱う。労務分野では、医療機関の労働紛争に関し、示談交渉、団体交渉、労働審判・労働訴訟等について医療機関側(使用者側)で対応している。このほか日常の労務管理、契約書作成、宿日直許可申請、労使紛争の予防に関しても助言を行っている。
労働法務分野のほか、医療事故・医療訴訟(医療機関側)、患者クレーム対応、患者未収金回収、個人情報(患者情報)の保護、医療機関の事業承継・M&Aなど医療機関において発生する法律問題全般を取り扱っている。
※所属先:https://www.aichisogo.or.jp/profile/watanabe_kenji/
◆株式会社WorkVision
クラウド/パッケージを中心としたITソリューションの企画・開発・販売から運用・保守まで一貫して提供している。
ホームページ:https://workvision.net/
【内容】
医師の健康確保と時間外労働を制限する、いわゆる「医師の働き方改革」が2024 年度からスタートしました。各医療機関では、どこまで準備が進んでいたのでしょうか。
2020(令和2)年度の診療報酬改定では、地域医療の確保を図る観点から、過酷な勤務環境となっている地域の救急医療体制等において一定の実績を有する医療機関に対して、適切な労務管理等の実施を前提に「地域医療体制確保加算」が新設されました。
ところが、厚生労働省が2023年に実施した「地域医療体制確保加算」を算定している医療機関の調査では、時間外労働時間が月80時間(年960時間相当)以上の医師の割合が、2020年から2022年にかけて増加しているという結果が報告されました。急性期病院の医師に時間外が増えているというのです。
そこには、多忙な医療現場の声として「医師の確保が難しくなった」、「救急搬送患者が増えた」、「新型コロナ患者の対応に追われた」の他、「宿日直時間が労働時間になった」、「宿直の翌日は業務が免除されるようになった」等の理由が聞こえてきます。
時間外労働時間が増えたのは、すべての医師の業務負担が増えたからと簡単には片づけられない事情があるようです。その背景にある「医師の宿日直の厳格化」や「適切な労務管理の推進」が、大きな要因の一つであると考えます。
近年、紙ベースの出勤簿から就業管理システムを導入して出退勤管理に取り組む医療機関が増えてきました。これに伴い、これまで見えなかった労務リスクの見える化や労務管理の効率化が飛躍的な進化を遂げています。さらに、2024 年度から医師の時間外労働の上限規制が導入されたことにより、地域医療確保暫定特例水準等においては時間外労働の管理はもとより、勤務間インターバルの遵守等、医師の適切な労務管理が求められています。正に労務管理のリープフロッグ(蛙飛び)現象が起きたといっても過言ではありません。
このように医師の労務管理に重点を置く医療機関がある一方で、痛ましい事件も起きています。ある医療機関で起きた医師が過労死した問題で、違法な時間外労働を行わせた疑いがあるとして、当該医療機関を運営する法人とその幹部が書類送検されました。職場風土として「適切な労務管理」が醸成されていない事例のようです。
本書は、医療機関の幹部の皆さまをはじめ、医師の働き方改革を推進する役割の皆さま、医師の働き方改革をサポートしている事務職の皆さまが適切な労務管理に取り組むために、各医療機関の実情に合わせた勤務間インターバルや宿日直の取り扱い方、自己研鑽の労働時間該当性の考え方等について、身近な事例や判例を参考にしながら、医療機関の労務管理に詳しい社会保険労務士と法律の専門家が分かりやすく解説しています。
また、医師の労務管理を適切に行うためのツールとして、最先端の「就業管理システム」の仕組みのご紹介もさせていただきます。
【目次】
はじめに
■第1章 医師の働き方改革への対応
1.1 少子高齢化の推移と働き方改革
⑴ 仕事と育児の両立
⑵ 仕事と介護の両立
⑶ 働き方改革と職場環境
1.2 医療現場からの相談内容と対応
⑴ 適切な労働時間の管理
⑵ 労働人口減少による影響
⑶ 長時間労働への対応
⑷ 課題解決に向けた取組み
■第2章 時間外労働上限規制のキモは追加的健康確保措置
2.1 すべての水準の医師に求められる面接指導
⑴ 面接指導実施医師
⑵ 面接指導の実施内容
⑶ 面接指導の実施時期
⑷ 副業・兼業を行う医師の面接指導の取扱い
⑸ 面接指導の実施環境
2.2 B・C水準の医師に求められる勤務間インターバル
⑴ 勤務間インターバルへの対応
⑵ 勤務間インターバルの特例
⑶ 1日の間に短時間の休息と労働が繰り返されることが予定されている場合の始業の取扱い
⑷ 2種類の連続勤務時間制限と勤務間インターバル規制の関係
⑸ 当直中に宿日直許可の有無が異なる時間帯がある場合(準夜帯が許可なし、深夜帯が許可あり)
⑹ 日中は主たる勤務先のA病院で勤務し、移動を挟んだ後に副業・兼業先のB病院の宿直に勤務する場合
⑺ 代償休息への対応
⑻ C-1水準が適用される臨床研修医への連続勤務時間制限・勤務間インターバルの基本的な考え方
■第3章 労働時間の判断基準と宿日直許可基準
3.1 医師の労働時間を巡る裁判例と対策
3.2 「労働時間」の意義
⑴ 最高裁平成12年3月9日判決(三菱重工長崎造船所事件)
⑵ 「指揮命令下に置かれている」とは
3.3 医師の自主的活動時間
⑴ 問題の所在
⑵ 厚生労働省の通達
⑶ 長崎地裁令和元年5月27日判決(長崎市立病院機構事件)
⑷ 医師の自己研鑽の時間についてのその他の判例
⑸ 医師の働き方改革において求められる医師の労働時間管理
3.4 宿日直勤務の時間
⑴ 問題の所在
⑵ 待機時間が労働時間に該当するか
⑶ 宿日直許可制度の適用を受けることができるか
⑷ 大阪高裁平成22年11月16日判決(奈良県事件)
⑸ 宿日直に関するその他の判例
⑹ 医師の働き方改革を進める上でとるべき対応
3.5 医師の働き方改革と労働訴訟
3.6 医師の宿日直許可の考え方
⑴ 宿日直許可とは
⑵ 宿日直許可基準について
⑶ 宿日直許可申請について
⑷ 宿直業務に関する裁判例の紹介
■第4章 医師の働き方改革を推進するための5つのステップ
4.1 医師の働き方改革は5つのステップで推進する
4.2 ステップ1 時間外の確認
4.3 ステップ2 意識改革
⑴ 病院の事例
⑵ 課題解決へのポイント
4.4 ステップ3 業務負担軽減
⑴ 病院の事例
⑵ 課題解決へのポイント
4.5 ステップ4 労働時間の取扱い(その1:労働時間該当性の判断基準)
⑴ 病院の事例
⑵ 課題解決へのポイント
4.6 ステップ4 労働時間の取扱い(その2:宿日直許可の取得)
⑴ 病院の事例
⑵ 課題解決へのポイント
4.7 ステップ5 勤務シフトの導入
⑴ 病院の事例
⑵ 課題解決へのポイント
■5章 医師の働き方改革!実践事例
5.1 200床の二次救急病院の事例
⑴ 医師の時間外労働時間の実態
⑵ 労働時間短縮に向けた3つのプラン
5.2 救急外来業務について労働基準法上の宿日直許可を得る
⑴ 宿日直許可申請の手続き
⑵ 宿日直中の労働時間の取扱い
5.3 宿直業務を外部の医師に任せる
5.4 ワークシェアを推進し、医師の業務の一部を他職種に任せる
5.5 700床の高度急性期病院の事例
⑴ 医師の時間外労働時間の把握
⑵ 医師を中心とする会議体の設置
5.6 医師の業務負担軽減の取組み
⑴ 逆紹介の推進
⑵ 医師の署名、承認の簡略化
⑶ 代行入力の拡大
⑷ クリニカルパスの代行入力
5.7 他職種の取組みと新たな課題
⑴ 他職種の取組み
⑵ 新たな課題
■6章 医師の働き方改革に関するトピックス
6.1 診療報酬改定と働き方改革
⑴ 地域医療体制確保加算の見直し
⑵ 特定集中治療室管理料の見直し
⑶ 処置及び手術の休日加算1等の見直し
6.2 医療機関が遵守すべき安全配慮義務
6.3 救急部門のタスク・シフト
6.4 公立病院における医師事務作業補助者確保の課題
⑴ 医師事務作業補助者等の採用に関する課題
⑵ 採用における民間病院と公立病院の違い
⑶ 医師事務作業補助者等を確保するためには
■第7章 医師の働き方改革は「就業管理システム」で推進する
7.1 就業管理システム導入の必要性
7.2 労働(滞在)時間を把握する仕組み
⑴ ICカード型タイムレコーダ(KS4200)
⑵ 生体認証型(指静脈)タイムレコーダ(KS4200FV2)
⑶ 生体認証型(手のひら静脈)タイムレコーダ(KS05)
⑷ スマートフォンタイムレコーダ
⑸ 外部システム(ビーコン)との連携
7.3 医師の勤務計画の作成
⑴ 変形労働時間制への対応
⑵ 勤務計画作成の支援機能
7.4 労働時間および自己研鑽等の把握
⑴ 時間外申請および労働時間以外の時間を把握する仕組み
⑵ 副業・兼業先の労働時間の把握
7.5 勤務間インターバルと代償休息の管理
⑴ 代償休息の付与
⑵ 代償休息付与の自動化
⑶ 休日への代償休息の充当
⑷ 代償休息の付与状況を把握する仕組み
⑸ 労働時間を通算した勤務間インターバルの確保
7.6 勤務状況をフィードバックする仕組み
⑴ 警告メッセージ機能
⑵ データ抽出とレポート機能
巻末資料
◎奥付情報
印刷・製本 亜細亜印刷株式会社
初版発行 2024年10月31日