建築の視点で見る 相続と土地の分割・活用

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建築の視点で見る 相続と土地の分割・活用

相続における遺産分割/共有不動産の解消/広い土地の有効活用など、土地の分割・活用を考える際は、「建築の視点」と「不動産実務の視点」の2面から対策を考えることが必要です。

大木祐悟・小林佳苗
A5判・196頁(H210×W148×11 320g)並製 
◆定価:本体価格 2,400円+税
◆ISBN978-4-911064-06-1 C2034
◆2024年6月26日発売
◆デザイン:有吉一男

【著者紹介】
◎大木 祐悟(おおき ゆうご)
一般社団法人不動産総合戦略協会理事長、旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所特任研究員
1983年旭化成工業株式会社入社。同社にて1993年より不動産コンサルティング実務に従事。専門はマンション再生、マンション標準管理規約、マンション防災、借地借家法、都市農地問題等。マンション管理士、再開発プランナー、宅地建物取引士。
著書に「定期借地権活用のすすめ」「マンション再生」「逐条詳解マンション標準管理規約」(以上、プログレス刊)、「マンション建替えの法と実務」(共著、有斐閣刊)「最強マンション購入術」「災害が来た!どうするマンション」(以上、ロギカ書房)ほかがある。
◎小林 佳苗(こばやし かなえ)
司法書士、一級建築士、宅地建物取引士
建築設計監理、不動産開発、信託銀行での不動産アドバイザリー業務等を経て、現在は司法書士法人代表。不動産/金融を専門分野とする他、NPO法人等で相続・不動産分野の相談員も務める。

【内容】
近年、「所有者不明土地」が大きな社会問題となり、この点に対応するための法改正などもされています。実際に筆者が直接聞いた話の中でも、相続が重なった結果、40人で小さな不動産を共有していたものがありました。
以上の話は極端なものかもしれませんが、不動産コンサルティングの依頼の中で「共有関係の解消」についての相談を受けることは少なくありません。また、そもそも土地が共有となっている理由をヒアリングすると、その多くは相続の際に「共有」を選択したことによります。
ところで、土地を共有することを「共憂」と揶揄する人がいますが、現実には共有することそのものが問題であるわけではありません。たとえば、夫婦と子供が一人という家族関係で、土地所有者が逝去されたときにその人物の配偶者と子供の2人が相続により土地を共有していても、分割が問題になるようなケースはほとんどないはずです。
一方で、将来的に共有物分割が必要となるようなときに、「とりあえず共有」で相続をすることは、問題の先送りになる可能性が高くなります。
さて、相続人が複数いるときで、いずれ土地を分割しなければいけないことが想定される場合には、予め土地を分割相続すべきであることは理解したとして、それでは土地を機械的に分割すればよいのでしょうか。同じことは共有地の分割でも考えなければいけない問題でもあります。
結論から言えば、機械的に土地を分割すると「2÷2<1」となってしまう可能性があります。その理由は、特に都市部の土地については、「その土地上に建築可能な建物によって、評価が大きく変わる可能性がある」ためです。
筆者は、土地を有効に分割するためには、建築の知識と不動産実務のノウハウが必要であると考えています。本書では、これらについて基本的な内容を示したうえで、事例の紹介もさせていただきます。
不動産の活用の専門家はもとより、弁護士さん、或いは税理士さんなども、遺産分割や共有物分割の相談を受けることが多いと思いますが、このようなときも本書の内容は参考になると思います。
本書の内容を理解していただいたうえで、2÷2≧1となる土地分割が広がることを期待したいと思います。

【主要目次】
◆第1章 建築の視点で考える土地分割の実務
1.はじめに
1)土地分割が必要となるとき
2)土地分割を考える際に留意すべき視点
① 建築の視点が必要な理由
② 不動産実務の視点が必要な理由
2.まとまった広さの土地の分割活用を考えるとき
事例1:賃貸住宅の一部建替えの相談を受けたケース
事例2:行き過ぎた相続対策の提案を受けたケース
3.遺産分割対策について
1)相続対策の基本的考え方
2)土地相続対策として土地の活用を考える際の留意点
○経営の視点とは
4.共有物分割
◆第2章 土地の分割を考える際の留意点
1.基本的な考え方
1)分割を考える時点と場面
2)土地の分割を考えるときに注意すべき事項
3)分割する土地それぞれの評価
参考1:財産評価基本通達による評価
参考2:物件の特性の違いも認識することの必要性
4)インフラ整備の必要性の有無
事例1:分割予定地にインフラが1つしかないとき
事例2:老朽木造貸家の建替え相談を受けたケース
事例3:前面道路が私道である場合の道路掘削に係る課題
5)敷地境界の確定について
2.その他留意すべき事項
1)登記簿面積と実測面積に違いがある可能性
2)道路後退の必要性の有無
3)私道に面した土地における道路の所有形態
◆第3章 分割についての基本的な考え方
1.土地分割手法の分類
1)相続の際の遺産分割方法と共有物分割の手法
2)換価分割について
3)代償分割について
4)共有者間における持分の売買
5)交換
○固定資産の交換の特例
6)等価交換マンションという考え方
① 立体買換えの特例の適用条件
② 等価交換マンション事業
③ 等価交換マンションの事業方式
④ あえて課税の特例を使わない選択肢
2.相続対策を考える際の補足
1)評価の高い土地を所有しているとき
2)相続税の申告期限を踏まえた準備の必要性
3)相続税を軽減するための仕組み
4)土地評価の軽減手法
① 概要
② 不整形地の価格補正
③ 評価単位
5)遺産分割対策の必要性
6)相続対策を考えるときのもう1つの留意点
◆第4章 土地分割の検討に必要な建築の視点
1.土地分割を考えるときのもう1つの視点
1)分割後の土地で建築可能な建物を踏まえた分割
2.分割の検討に際して知っておきたい建築知識
1)どのような知見が必要か
2)道路について
① 「道路」とは
② 道路後退について考える
③ 43条但書き道路について
3)壁面後退
4)用途地域
5)建蔽率・容積率
事例:他の規定により容積率をフルに利用できないケース
6)敷地面積
7)高さの制限
① 絶対高さ制限
② 道路斜線制限
③ 隣地斜線制限
④ 北側斜線制限
⑤ 高度地区による制限
8)日影規制
9)設計を考えるときのその他の留意点
① 有効採光率
② 階段
③ 特殊建築物についての避難や消火設備
④ 防火指定
10)条例や建築協定(1)路地状敷地の制限
① 路地状敷地の制限
② 路地状敷地に係る東京都建築安全条例による制約
11)条例や建築協定(2)集合住宅の建築
① 共同住宅の建築に係る東京都建築安全条例による制約
② 路地状敷地における共同住宅建築の制約
12)特殊建築物についての制約
13)建築協定
14)土地上に複数の建物が建築されているとき
① 附属建物について
② 建築基準法の一団地認定と連担建築物設計制度
3.土地形状や周辺の土地の状況による制約
1)土地の形状による制約
2)路地状敷地について
3)敷地内に高低差のある土地
4)隣地との間に高低差があるとき
5)開発許可について
① 位置指定道路を設置するか開発をかけるべきか
② 開発許可の流れ
③ 古い開発地における留意点
◆第5章 事例で土地分割を考える
1.基本的な事例で分割を考える
1)兄弟2人の共有地をどのように分割するか
2)分割後の土地利用を視野に入れる必要性
2.テーマごとに分割を考える
1)二次相続まで鑑みた分割
2)「接道」に制約がある土地
3)予め私道を敷設した計画
4)「道路とは何か」が課題となったケース
5)容積率について(容積率の高い土地の評価)
6)容積率について(接道による容積率の制約)
7)分割後の土地で容積率を活かすことの可否
8)条例による最低面積の制約
9)2つの土地の持分の交換事例
10)2つの土地を3人が均等に共有していたケース
11)借地権と底地の交換事例
12)等価交換マンション事業で共有物分割をしたケース
13)等価交換マンションで共有物分割をした他のケース

◎奥付情報
印刷・製本 亜細亜印刷株式会社
初版発行 2024年7月20日