|本の詳細
仕事で悩まない減価償却
仕事上、惑わされず、
正しい判断をするための本
●減価償却事始め
●減価償却するもの、しないもの
●除却と買替え
●利益計算と減価償却
●利益及び現金増加額の関係
●商品原価及び販売価格
●販売数量・固定費・変動費
●減価償却費と意思決定・収益性判定
●現代会計の構造と減価償却費
土田 義憲
A5判・192頁(H210×W148×11 310g)並製
◆定価:本体価格 2,400円+税
◆ISBN978-4-911064-05-4 C2034
◆2024年5月1日発売
◆デザイン:Izumiya
【著者】
土田 義憲(つちだ よしのり)
会計リテラシー教育研究所代表・公認会計士
新日本監査法人シニアパートナー、国際教養大学客員教授を経て、現職
【主な著書】
『仕事で使える 管理会計』(ロギカ書房)
『社会人になったら知っておきたい 人生のお金の話』(ロギカ書房)
『君たち中学生・高校生が学ぶ会計』(ロギカ書房)
『会計思考で理解する 会社のお金の流れと管理』(ロギカ書房)
『会計思考で不正取引を発見・防止するための本』(ロギカ書房)
『会計思考で成長する若手社員 入社5年目 秋山君の挑戦』(ロギカ書房)
『実践ビジネス・リスク・マネジメント』(大蔵財務協会)
『内部統制の実務』(中央経済社)
『財務報告に係る内部統制』(中央経済社)
『取締役・監査役の内部統制』(中央経済社)
『内部監査の実務』(中央経済社)
『税務調査で使える内部統制のつくり方』(中央経済社)
【内容】
会計に減価償却という手法が導入されたのは、蒸気機関車が発明され、鉄道網が整備されたイギリスの産業革命期であるとされています。
それまでの会計の手法では、支出したお金を経費、受け取ったお金は収入とし、その差額が儲け(利益)とされていました。
しかし、鉄道事業では、顧客から運賃という収入を得る前に線路用の土地買収、レールの敷設、駅舎の建設、蒸気機関車や客車の建造などに膨大な支出を要します。従来の会計手法に従えば、鉄道が開業する前の数年間は支出による経費の発生が先行し、巨額の赤字が発生し続けます。これでは、投資家に配当を支払うのは夢のまた夢であり、彼・彼女らから鉄道建設に必要な資金を集めるのは容易なことではありません。
そこで鉄道事業を夢見た人たちは、鉄道施設建設のための支出を支出した年の経費ではなく、建設した鉄道施設を利用する期間に配分し、配分された金額をその期間の経費とする方法を考えついたのです。これが減価償却の始まりです。
これにより、それまでの支出= 経費という考えを改めて、支出額は投資、経費は各期間に配分された金額(すなわち、減価償却費)とする考え方が誕生したのです。
そしてここに、新たな疑問を持つ人が多数誕生します。「お金を支払ったのならば、儲けを計算する際に収入から控除する」のは当然だが、「お金を全然支払っていないのに減価償却費を控除するのはなぜだろう」という疑問です。
「儲けを計算する際に、お金を支払っていない減価償却費を収入から控除するのはなぜだろう?」という疑問を持つ人は、現在でもかなりの数で存在します。これから先の、すなわち将来の儲けの有無と大きさを判断する際に、減価償却費の存在に惑わされる人も少なからず存在します。本書は、そのような方々の疑問に答えるために書き下ろしたものです。
減価償却の意味、減価償却の方法、記録方法に関しては、すでに多くの出版物があります。しかし、「会社の損益計算書に表示される減価償却費は現金の支出がないのに収益から控除されるという特異性とその影響」、「製品や新規受注品の価格計算における減価償却費の取扱い」、「追加投資を検討する際の減価償却費の位置づけ」等を取りあげた出版物はあまり多くないように思われます。
そこで本書では、仕事をする人が減価償却費に惑わされることなく、正しい判断をするのに役立つように、以下の事項を中心に取り上げています。
●利益計算における減価償却費の意味
●利益と現金増加額の関係
●製品価格・新規受注・追加投資の決定をする際の減価償却費の取扱い
●その際に考慮すべき減価償却費の真の姿
他方、減価償却の意味、償却方法、記録の方法という基礎的な解説は最小限にとどめています。
【主要目次】
●第1部 減価償却の基礎
〇第1章 減価償却の意義
1. 減価償却の始まり
(1)蒸気機関の発明
(2)鉄道事業の誕生
(3)鉄道事業家の悩み
(4)減価償却による解消
(5)産業革命への貢献
2. 減価償却をするもの
(1)減価償却をする理由
(2)減価償却費の区分表示
3. 減価償却をしないもの
(1)支出したときに経費とするもの
(2)金額が僅少なもの
(3)〝減価しない〟と考えられるもの
〇第2章 減価償却の三要素
1. 取得原価
(1)購入代金
(2)付属費用
(3)借入金の支払利息
2. 耐用年数
(1)耐用年数とは?
(2)一律な年数はない
(3)利益への影響
(4)法人税法の影響
3. 残存価額(残存簿価)
(1)残存価額とは?
(2)減価償却の対象金額
(3)残存価額の見積り
4. 修繕・改良と減価償却費
(1)修繕と改良の違い
(2)減価償却費への影響
(3)減価償却費の再計算例
5. 使用可能期間の延長
(1)対策しない場合
(2)残りの使用期間で再配分
〇第3章 減価償却の方法と記録
1. 減価償却の方法
(1)定額法
(2)定率法
(3)生産高比例法
2. 減価償却の記録方法
(1)直接法
(2)間接法
〇第4章 資産の除却と買替え
1. 使用不能になった資産の除却
(1)売却の場合
(2)廃棄の場合
2. 買替え
(1)買替え候補
(2)買替え資金
(3)借入と増資の優劣比較
●第2 部 減価償却費の特質と実務での留意点
〇第5章 減価償却費と利益及び現金増加額の関係
1. 減価償却費とお金の流れ
(1)その他経費がない事例
(2)その他経費がある事例
(3)減価償却費とその他経費の違い
2. 決算書における減価償却費
(1)決算書とは何か?
(2)支出金額と減価償却費の表示
(3)減価償却費と利益の関係
(4)利益と現金増加額の関係
〇第6章 減価償却費と商品原価及び販売価格
1. 減価償却費を含む総原価と販売価格
(1)会社存続の条件
(2)減価償却費と総原価の構成
(3)総原価と販売価格
2. 商品1個当たり総原価と減価償却費
(1)1個当たり原価の把握
(2)変動費と固定費
(3)減価償却費からみる大量生産のメリット
(4)カラオケ店の減価償却費と料金の関係
3. マーケットで販売価格が決まる場合
(1)原価低減活動
(2)生産中止の検討
(3)販売価格による減価償却費の回収範囲
(4)カラオケ店の団体割引・延長割引の原資
〇第7章 販売数量と減価償却費等の固定費及び利益の関係
1. 変動費と減価償却費等の固定費
(1)販売会社の変動費と固定費
(2)2 種類の固定費
2. 販売数量と減価償却費等の固定費との関係
(1)貢献利益と固定費 の関係
(2)販売数量と貢献利益、利益の関係
3. グラフィック表示
(1)貢献利益
(2)減価償却費等の固定費
(3)販売数量と貢献利益および固定費の関係
(4)貢献利益、固定費、利益の関係
4. 貢献利益と減価償却費等の固定費を踏まえた判断
(1)原価割れの商品は生産中止か?
(2)どの商品を販売するか?
5. 貢献利益式損益計算書
(1)伝統式な損益計算書
(2)貢献利益式損益計算書への組替え
(3)貢献利益式損益計算書のメリット・デメリット
〇第8章 減価償却費を除外しての意思決定
1. 増えない減価償却費- 特別追加注文の受注
(1)特別な注文とは何か?
(2)引き受けるか否かの判断基準
(3)利益が増えるか否かの検討
(4)増える販売収入と製造原価
(5)この決定の要点
2. 増えない減価償却費- カラオケ店の昼オケ割
(1)昼オケ割の内容
(2)昼オケ割を導入するか否かの判断基準
(3)利益が増えるか否かの検討
(4)増える売上高と原価
3. 減らない減価償却費- 内製か外注かの決定
(1)外注化の申し出
(2)外注化の判断基準
(3)検討過程
(4)比較検討
(5)この決定の要点
〇第9章 収益性判定における減価償却費の位置
1. 減価償却費を含めない投資前の収益性判定
(1)プロジェクト投資の意思決定とは?
(2)コスト削減のための機械化投資
(3)コンビニ出店のための投資
(4)リースか、購入か?
(5)回収期間の比較
2. 減価償却費を含めた投資後の収益性判定
(1)投資利益率とは
(2)判定のルール
(3)投資利益率法の活用
(4)物価変動の調整
〇第10 章 減価償却費を含めない収益性判定にお金の時間価値を考慮する事例
1. お金の時間価値
(1)支出・収入の時間軸のズレ
(2)お金の時間価値とは?
(3)現在価値
(4)時間価値を考慮した選択
2. 現在価値法
(1)現在価値法と割引率
(2)資金コストの計算
(3)現在価値法の前提
3. 現在価値法による収益性の判定
(1)コスト削減のための機械化投資
(2)コンビニ出店のための投資
(3)リースか、購入か?
(4)設備の取替え投資の選択
●追補の部 現代会計の構造と減価償却費
〇補章1 現金支出がない減価償却費を控除する利益計算の仕組み
1. 利益の概念とその計算
(1)儲け、本書の利益、会計上の利益の違い
(2)違いの原因
(3)経済活動の多層化
2. 収益・費用と収入・支出のタイミング
(1)収益と収入のタイミング
(2)費用と支出のタイミング
(3)減価償却費の占める割合
〇補章2 減価償却費の影響を明らかにする
キャッシュ・フロー計算書
1. 誕生の背景
(1)利益と現金増加額の関係
(2)キャッシュ・フロー計算書の誕生
2. キャッシュ・フロー計算書の内容
(1)資金の流れ
(2)キャッシュ・フロー計算書の様式
3. キャッシュ・フロー計算書の機能
【奥付情報】
印刷・製本 モリモト印刷株式会社
初版発行 2024年5月20日