病院経営財務マネジメント~財務基盤強化のための実践テキスト

|本の詳細

良い医療の提供。それは、政策、設備、診療、収益、働き方などに裏打ちされた健全な財務体質があってこそ出来る。著名な編著者による具体的な解説と大小10病院の実践の寄稿で構成する、病院の財務基盤強化のための実践テキスト。
 
病院経営財務マネジメント~財務基盤強化のための実践テキスト
井上 貴裕 編著
A5判・352頁(H210×W19 530g)並製 
◆本体価格 4,000円+税
◆ISBN978-4-909090-25-6 C2047
◆2019年6月6日発売
◆Cover Design 有吉一男
●著者プロフィール
◎井上 貴裕(いのうえ たかひろ)
千葉大学医学部附属病院 副病院長・病院経営管理学研究センター長・特任教授、ちば医経塾塾長。
東京医科歯科大学大学院にて医学博士及び医療政策学修士、上智大学大学院経済学研究科及び明治大学大学院経営学研究科にて経営学修士を修得。
東京医科歯科大学医学部附属病院 病院長補佐・特任准教授を経て現職。
日本赤十字社本社医療施設教育研修アドバイザー
東邦大学医学部医学科客員教授
武蔵野赤十字病院、大垣市民病院等、各地の中核病院の経営アドバイザーを務めている。
◎池田 栄人(いけだ えいと)京都第一赤十字病院院長
◎亀田 義人(かめだ よしひと)千葉大学医学部附属病院 病院経営管理学研究センター特任講師、千葉大学予防医学センター特任助教
◎川腰 晃弘(かわごし あきひろ)医療法人社団浅ノ川 金沢脳神経外科病院事務部経営企画課長
◎北野 喜良(きたの きよし) 国立病院機構 まつもと医療センター院長
◎小室 瑞夫(こむろ みずお)桐和会ユニバーサルメディカルサービス事業開発部部長(兼)経理部部長
◎関 利 盛(せき としもり)医学博士札幌市病院事業管理者・市立札幌病院長
◎武久 洋三(たけひさ ようぞう)平成医療福祉グループ代表
◎田中 繁道(たなか しげみち)医療法人渓仁会理事長
◎遠山 一喜(とおやま かずき)高岡市民病院前院長
◎藤井 将志(ふじい まさし)谷田会 谷田病院事務部長
◎前田 博教(まえだ ひろのり)高知県立あき総合病院院長
◎吉村 健佑(よしむら けんすけ)千葉大学医学部附属病院 病院経営管理学研究センター特任講師、国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター客員研員
 
●内容紹介 
 病院経営者ならば誰もが自分の病院を赤字にしたくない、できれば毎期黒字の決算で締めくくりたいと願っているはずだ。これは、次の投資機会を失わず持続的な成長を遂げていくことが良質な医療提供につながるという発想からである。
しかし、病院経営に逆風が吹き続けており、今後も回復の見込みが立たないのだとすれば、将来は経済性が医療を支配するのが常識となってしまうかもしれない。では、どうしたらそのような未来の到来を避けることができるだろうか。
 最も大切なことは病院が健全経営を続けることだ。赤字でも実施すべき医療があると私は信じている。しかし、その赤字は全体のどこかで吸収し、補填していかなければならない。未来永劫、あらゆる領域で赤字では次の投資ができなくなってしまう。では、どうしたら健全経営を続けられるのだろうか。1つは医療政策や診療報酬の方向性を的確に把握し、その方向性に沿った医療提供を行うことだ。良くも悪くも病院は規制産業であり、だからこそ政策を無視した経営は不可能だ。もちろんただ政策に流されるのではなく、自ら率先した取り組みも必要不可欠であるが、それは政策を理解してこそ可能になるだろう。
 そしてもう1つは地域の医療の実情を見据えた現実的な意思決定を行うことだ。夢や理想も大切だが、自らの立ち位置を客観的に把握し、独自の立ち位置を築くことが優位性の源泉である。地域の医療提供体制の中で不可欠な存在を目指すことが財務基盤を強化することにもつながるだろう。
 本書は、医療政策や診療報酬についての論点を主に第1章で取り上げた。本書だけで網羅できているわけではない点はご容赦いただきたいが(シリーズ書籍もご参照いただきたい)、平成30年度診療報酬改定を踏まえた最新の内容で構成している。そして、第2章では、今後の病院経営で外せない点、第3章では、病院経営のプロフェッショナルが闘ってきた事例を紹介している。戦略の立案から、リーダーシップ、組織管理についてふれていただいた。
病院経営は戦略を立案したらそれで終わりではない。それはスタートラインに過ぎない。組織を活性化し、現場を鼓舞し、そして患者のために日々働く職員たちが生き生きとして活躍する基盤を整えることこそが経営者の役割である。
 消費税増税や診療報酬本体改定の財源不足など今後も病院経営を取り巻く環境は決して楽観視できない。しかし、医療政策の方向性を踏まえ、地域に不可欠な医療提供を現実的に行い、適切なリーダーシップを発揮し、質の高い医療を提供する医療機関の未来は明るいと私は信じている。本書がそのきっかけづくりに微力ながら貢献できることを願っている。
 
●目次
第1章 病院経営と財務マネジメント(井上 貴裕・千葉大学医学部附属病院)
1.1 公立病院の財務状況を悪化させる元凶と対応策
1.2 繰入金に頼る公立病院が踏み出すべき一歩
1.3 なぜ大垣市民病院は強いのか?
1.4 今のままでの消費税補てんなら、診療機器更新は絶望的
1.5 18年度改定が機能評価係数Ⅱに与えた影響とは
1.6 ロボット支援下手術をどう考えるか
1.7 救急医療入院の地域差を再検証する
1.8 救急医療係数で適切な評価を受けるために
1.9 在院日数が持つ意味は内科と外科で異なる
1.10 白内障手術の外来化を進め、急性期らしい病床活用を
1.11 診療密度と効率性係数が低い病院はDPC病院として妥当なのか
1.12 2019年のGW、10連休の一部開院も検討を~今後の大型連休と病院経営を考える~
1.13 急性期の「目安」は6万円の診療単価
1.14 地域一般入院基本料は、地域包括ケア病棟との統合も視野か
1.15 中核病院に求められる外来診療機能~働き方改革に必要な外来縮小~
1.16 働き方改革の時代~補助者の重要性と今後の課題~
1.17 平均在院日数は下げ止まったのか?~地域包括ケア病棟 台頭の影響~
1.18 「妊婦加算」凍結で問われる診療報酬のあるべき姿
1.19 高収益の薬局だからこそ、さらなる付加価値を
1.20 病院経営を市場原理に委ねるべきか
1.21 経営者に求められる英断~実効性のある意思決定を支えるフレームワークの活用~
第2章 これからの病院経営の視点 
2.1 病院経営層のための人工知能入門(亀田 義人・千葉大学医学部附属病院)
2.2 病院経営の視点で考える職員のメンタルヘルス対策(吉村 健佑・千葉大学医学部附属病院)
第3章 ケース・スタディ 10病院の実践
3.1 CSR経営を基盤にした独自のマネジメントシステムによる渓仁会グループの経営(田中 繁道・医療法人渓仁会)
3.2 市立札幌病院の経営改善への取組み(関 利盛・市立札幌病院)
3.3 グループの取組み内容とちば医経塾1期生として感じたこと(小室 瑞夫・TUMS(桐和会ユニバーサルメディカルサービス))
3.4 「1+1<2」の証明(北野 喜良・まつもと医療センター)
3.5 中規模ケアミックス型脳神経外科専門病院の経営戦略と取組事例~診療情報管理士は病院経営にどう貢献していくべきか~(川腰 晃弘・金沢脳神経外科病院)
3.6 赤字病院からの脱却を目指して(遠山 一喜・高岡市民病院)
3.7 経営改善の取組み~更なる成長のために、今なすべきこと~(池田 栄人・京都第一赤十字病院)
3.8 平成医療福祉グループの経営と慢性期医療(武久 洋三・平成医療福祉グループ)
3.9 崖っぷち自治体病院 復活のシナリオ(前田 博教・高知県立あき総合病院)
3.10 コンサルからケアミックス病院の事務長になって実践してきた病院経営(藤井 将志・谷田病院)
 
●奥付情報
印刷・製本 藤原印刷株式会社
初版発行 2019年6月20日